「加害者家族」を読んだ。

あまり焦点が当てられる事が無い加害者家族について

日常テレビを見ていると相変わらず、殺人事件や窃盗事件のニュースが多く、当然そこには「被害者と加害者」が存在します。 そして、被害者家族も会見等で日の目に晒される事は多いですね。この本は、知っている様で知らなかった「加害者家族」の事件後の生活について詳しく紹介しております。

まずは被害者ありきで、「加害者の罰はその家族の罰でもある」と言う意見が強い日本ですが、必ずしもそうでは無いですし、僕が本を読んで感じたのはある種「事故」の様な印象を受けました。自分達(加害者家族)がやった訳では無い為、正直どうしようも無い面もあります。

加害者家族に対して、メディアや世間が独立した意志を持って「絶対にゆるさない」と言わんばかりに、徹底的に加害者家族を追い詰めて袋叩きにする姿は、「それは正しい事なのか?」と思う所もいくつもありました。

ある主婦の例

洋子(仮名)は、夫と息子1人で慎ましいながらも幸せに暮らしていた。そんなある時、急に警察から「旦那に聞きたい事がある」と連絡があった。任意と言えど、何度も警察に呼び出される旦那に対して洋子は「本当に大丈夫なのか?」と尋ねるも夫は「問題無い」と答えるだけ。

言い知れぬ不安を心の奥底に感じながらも、これまで通り生活をしていると、また警察から連絡があり「旦那さんを殺人の容疑で逮捕します。事件の大きさから数時間後報道する事になります。そうなると、自宅に近づくのも難しくなるので、息子さんを連れて別に場所に避難してください」、、、と。

その後の洋子の生活は完全に破綻してしまい、息子は2度転校する事になり、親友のA子は結果的に洋子のせいで、A子とA子の旦那との間がギクシャクし離婚、A子はうつ病になり洋子と音信不通になる。。。

洋子の旦那が犯した殺人事件のせいで、洋子の家庭のみならず、その周辺に対しても壊滅的なダメージを与えてしまう事になったのです。

現代版「高瀬舟」

この本の中で森鴎外の「高瀬舟」そっくりのエピソードがありました。母親が実の息子を殺してしまうって事件ですが、これが非常に悲しいのです。

息子は結婚しており、妻子持ちですが、ある時借金問題を苦にして自殺を図るも死にきれず、植物人間状態になってしまいました。 自殺で負った傷は治療の際保険が利かず全て実費負担で、1日につき医者からは約30万掛かると言われた。なので奥さんは、積極的な治療を望んで無いことを医者に伝えるも、医者は「それはできない」と奥さんに告げました。

その事を義母(旦那の母)に伝えると、義母は「自分が産んだから。あなたには迷惑を掛けれない」と言い自らの手で植物状態の息子に刃を突き立て殺してしまいました。こんなに悲しい事があるでしょうか?

家庭内殺人・傷害は全体の4割を占めている

非常にびっくりしたんですが、家庭内で起きる身内同士の殺人や傷害は「全体の4割を占めている」そうです。確かにニュースでそういう事件を見かけますが、まさか4割とは、、、、多すぎます。

上の例なんかは、奥さんの立場は「加害者の家族であり、被害者の家族でもある」という事になりますね。ちなみに、加害者家族の立場になった際に、最後の最後まで被告(罪を犯した身内)を守るのは「母親」らしいです。父や兄弟・姉妹は割とドライに縁を切ってしまうようですよ。

アメリカの場合

1998年にアーカンソー州の高校で銃乱射事件が起きた際、事件の重大性から犯人の少年の名前・顔をテレビで公開した。 そして、母親は顔を出して記者会見に臨みました。

その後、ダンボール2箱分に及ぶ手紙が届きましたが、それの殆どは「母親を激励するもの」でした。例えば「あなたの息子さんは大変な状態だから頻繁に面会に行ってあげて欲しい」「貴方が息子さんを支える必要があるのよ」とかです。

この対応にはやはり疑問を僕は感じますが、常にどこかに・誰かに対して()け口を探している、日本人の内弁慶全開のやり方も疑問を感じます。まあ、これは日本人とアメリカ人の民度の違いって事でしょうね。

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